3-4. 真核生物の転写制御
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真核生物の遺伝子の制御も、遺伝子特異的な複数の制御配列とそれに作用する多様な制御因子によってなされる
ヒト全遺伝子の約15%が転写制御因子
ここではRNA pol II系遺伝子の転写制御について解説する
1) エンハンサーと転写制御因子
エンハンサー
転写活性化配列
遺伝子のさらに上流に、通常複数個存在する
プロモーターのように転写の方向を決める作用はない
転写制御因子
エンハンサーが働くのはそこにDNA結合性の転写制御因子(転写調節タンパク質)が結合し、それがプロモーター上の転写制御装置やRNA pol IIに作用を及ぼすため
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組織・時期特異的な転写制御因子は、特定の組織や特定の時期にある遺伝子が発現する現象に関与する
ホルモン、熱、薬物などの誘導要因によって転写が誘導される場合、かかわるエンハンサーを応答配列といい、そこには誘導要因によって直接あるいは間接的に活性化された転写制御因子が結合する
転写制御因子の構造と作用
転写制御因子は特徴的な機能領域としてDNA結合領域と転写活性化領域をもつ
因子によっては因子を活性化する低分子のリガンドが結合する領域、あるいはタンパク質相互作用領域をもつ
DNA結合領域と転写活性化領域は比較的独立に働かせることができるため、異なる因子に由来する部分を結合させて、人為的な融合転写因子をつくることができる
memo: エンハンサーRNA
エンハンサーRNA(eRNA)
エンハンサー部分から双方向に転写されるlncRNAの一種で、転写活性化に効く
スプライシングを受けず、ポリA鎖がないため、寿命は短い
染色体を束ねるコヒーシンと相互作用することから、DNAのループ形成などを通してクロマチンの立体構造変化を誘導する可能性がある
2) 制御のメカニズム
コアクチベーター
転写制御因子のみでは十分な転写の活性化がみられないという現象から発見された因子にコファクター(転写補助因子あるいは転写共役因子)がある
コアクチベーター
コファクターのうち活性化に効くもの
コリプレッサー
コファクターのうち抑制に効くもの
これらは転写制御因子の機能を発揮させるために必要な因子で、特定の転写制御因子と結合し、その機能を補助する
コファクターのなかには、基本転写因子と結合するものや、HAT(histone acetyltransferase:ヒストンアセチル化酵素)活性を持つものもある
memo: HATとHDAC
HATは特定のヒストンやそれ以外のタンパク質をアセチル化し、それにより、クロマチンの弛緩、転写関連因子のDNA結合、タンパク質相互作用を誘導して主に転写活性化に働く
HATの逆の活性を持つ酵素をHDAC(histone deacetylase:ヒストン脱アセチル化酵素)といい、転写抑制に働く
メディエーター
多数のタンパク質からなる巨大複合体で、多少のバリエーションはみられるものの基本的に細胞に1種類存在する
さまざまな転写活性化因子やRNA pol IIと結合し、またRNA pol IIを活性化(リン酸化)する酵素活性を持つ
転写制御因子の制御情報を集約してRNA pol IIを伝える作用がある